表題の『考えるとはどういうことか-0歳から100歳までの哲学入門 』(幻冬舎新書)は私が師事する東京大学教授梶谷真司先生が出版した一般向け書籍です。
(梶谷先生は哲学がご専門ですが、この本はいわゆる哲学書ではなく、『考える』ことを平易に、そして実例をまじえながらご説明されています。)
ここに書かれていることを、誤解を恐れずにひと言で言えば、『対話することにより思考を深める-哲学する』ということです。
以前にもブログに書いたのですが(表題:脳は怠ける)、ふだん我々は脳を使って考え行動していますが、深く考えて行っているかといえばそうでもありません。
常に深く考えていたら疲れてしまうし、そもそも深く考えて常に正解が導き出せるかといえばそうでもありませんから、脳の省力化の観点から、あるいは生きる術と言ってもいいかもしれませんが、深く考えないで生きるのは当然なのです。
しかしながら、いつもそうしていいわけではありません。
時には、あるいは必要な場合には深く考えなければなりません。
社会における活動では、状況が刻々と変わり、以前と同じ考え方ではうまく対処できなくなることは少なくありません。
そんな時に必要な行動が『対話することにより思考を深める』ことなのです。
対話ですから相手の存在が前提であることは言うまでもありません。
また、対話は議論やディベートとは異なります。
すなわち、どちらかの言い分が正しいとか間違っているとか、論理的におかしいとか、相手を言い負かすことは対話ではありません。
共に考えることが対話であり、相手の言っていることを理解しようと努力し(理解できなくてもいい、但し否定しない)、受け止めて考えをつなげたり、異なる視点を出したりして、対話を続け思考を深めることが重要なのです。
対話にはいくつかの留意点がありますが、それは梶谷先生の著書に詳しく書かれていますので、是非お読みになり、できれば職場などで実践してみて欲しいと思います。
(弊社でも対話を組み込んだプログラムは多数あるので、問い合わせは大歓迎ですが。)
対話することで人類の英知は培われてきましたが、成果や効率に囚われすぎて時間や手間のかかる方法を脇に追いやってしまっているのが現代ではないか。
あくまで個人的な仮説ですが、様々な組織のお手伝いをするなかで、そういう思いはぬぐいきれないというのが正直なところです。