最近人材育成の現場でよく語られるようになったキーワードに「フィードバック」があります。
「フィードバック」を定義すれば、“成果や進捗について何かを返して、相手に考えるきっかけを与えること”といえるでしょう。
仕事の現場では、日常的に行われているコミュニケーションです。
いくつかの研究から明らかになっていることは、フィードバックを受ける相手は、自身の見方とフィードバックの内容が近い場合には更に考えることを継続しますが、遠い場合には拒否したり無視したり他の根拠を求めたりするということです。
ということは、フィードバックする場合には、相手をよく理解したうえで行ったほうがよいということになります。
例えば、新しい企画をミーティングで決定した後にまとめる仕事を部下に命じたところ、事前に同意したはずのコンセプトとずれている資料を作ってきた場合、皆さんはどんなフィードバックをするでしょうか。
全くずれているやり直し、と一刀両断に切り捨てたり、ポイントを具体的にあげてやり直しを命ずることは簡単ですが、それではなかなか部下の成長に寄与しません。
どういう考えで資料を作ったのかをまず問いかけ、部下の見方を知り、考え方を認めたうえで、さらに必要なポイントがないかを問いかけます。相手の見方から始めるということです。
上司は部下の仕事の出来映えや進捗については頻繁に観ているといえるでしょう。
しかし、その時にどれだけ部下自身の見方に気を配っているでしょうか。
フィードバックに時間をかけて考えを及ぼすことは、指導能力を高めフィードバック反応力も高めます。
但し、明らかに誤った方向に向かっている場合やそもそも土台となる知識やスキルがない場合などはフィードバックより指導が有効です。
フィードバックはあくまで次を見据えてのものであり、その際には強力な武器となるものなのです。
自戒を込めて、フィードバックについてはよく考えて、仕事の出来映えというよりも利他の心をもって行いたいものです。