ブログ更新-「環境が人間をつくる」

スタンフォード大学教授のジェフリー・フェファー氏がその著書「悪いヤツほど出世する」で組織と権力について語っています。

フェファー氏によれば、集団を効果的に機能させるというリーダーの使命と、リーダー自身にとっての利益すなわち権力の強化や拡大との間には、つねに緊張が生じ、リーダー自身が生き延びるために、リーダーは往々にして自分の利益を優先することがある、と言います。
また、世の中のリーダーシップ研修を見渡すと、このような緊張の現実を扱っていないため、状況が改善されないとも指摘しています。

確かに世の中を見渡すと、リーダーの自己利益優先と思われる行動によりひずみが生まれ、ひいては不祥事に発展することが繰り返されています。

最近の例で言えば、東芝が挙げられるでしょう。
東芝のリーダーは、売上を上げる方策に知恵を絞ることを命じています。
これ自体は組織利益を考えれば当たり前の行動ですが、チャレンジと称して、短期間に売上を上げることを命じたところから怪しくなってきます。

このような無理な要求からは、組織利益というより、経営者としての体面や株主やアナリストからの評価を気にする自己利益優先の影を感じます。
経営会議でどなり散らしていたという報道が事実であればなおさらです。

人間は自己の存在が脅かされると感情的になることは容易に想像できます。
そして、さらに悪いことに、こうした状況では本人がそれを自覚することが難しくなるものです。

東芝の例を挙げるまでもなく、リーダーの自己利益優先の度が過ぎれば、組織存続の危機に陥ってしまう可能性は高くなります。

組織存続の危機に陥らないためには、リーダーの自己規律の育み方が重要なテーマでしょうが、フェファー氏が言うように、既存のリーダーシップ研修ではそういった側面をほとんど扱っていないのです。
リーダーシップ研修では、組織のパフォーマンスを高め部下の士気を高めるリーダー像を語ることにとどまっており、いわば理想論に終始してしまっています。

研修でリーダーの使命とリーダー自身の利益に生ずる緊張を扱うのもひとつの方法ですが、それよりも厳しい局面での認知のあり方を、日常の活動において育むことが鍵になると思います。

人間は悪い状況になると、過度に自分に意識が向かい防御本能が頭をもたげてくるため、そうした場合に、自分に意識が向くことを出来るだけ減らす工夫が必要だと思うのです。

ある企業では、失敗を善しとしやり直しを歓迎する風土を築いています。

また、トヨタの“なぜを5回繰り返す”は、背後にある本質的な事象に目を向けさせてくれ、失敗から学ぶことはもちろんのこと、前向きな風土の構築に貢献しています。

このような風土で育てば、悪い状況に立ち向かわなければならない時にも、過度に自分に意識を向けることなく、組織に必要なことを優先する姿勢が培われ、自己利益優先の行動を恥ずかしく感じるようになると思うのです。

環境が人間をつくる。
いかなる組織でも忘れてはならない原則です。