「組織の不条理」- 菊澤 研宗(著)

菊澤研宗先生の2000年の著書。

神ではないすべての人間は、情報を収集し、処理し、そして表現する能力が限定されているため、限定された能力のなかでしか合理的に行動できないという限定合理性の仮定のもとに大東亜戦争における日本陸軍や、企業組織の現象を分析している。

限定合理的アプローチによって、「合理的な非効率」や「合理的な不正」という不条理が発生する可能性が説明でき、つまり、人間の合理性と効率性、倫理性は必ずしも一致しないとする。

人間が完全合理性の妄想に陥りやすい思想として「勝利主義」、「集権主義」、「全体主義」を取り上げ、組織の中でこれらの思想にとらわれると、人は自分が限定合理性的であることを忘れ、自由な議論を許さず、批判を受け入れず、ドグマ化して「閉ざされた組織」を形成することになる、と警鐘を鳴らしている。

開かれた組織」でならなくてはならい。それは、「自由人のための組織」といえる。
この組織は、組織メンバーが限定合理性的であることを自覚し、誤りから学ぼうとし、そして組織内に批判ができる議論の場が設定される組織であり、(ユートピア主義的理想に向かって大変革されなくとも!)実行可能で緊急を要するような諸問題が絶えず漸次的に解決されていくことで、絶えず未来に向かって進化していく可能性も持つ。